名前を教えてあげる。
年少の子が暗くてトイレに行けないと泣けば、手を引いて連れて行ってやるし、学園の行事の手伝いもきちんとする。
園長は学校に事実を隠すことを決めた。
美緒の親戚で不幸があり、2,3週間ほど山陰地方にあるその家に行かなければならないと担任教師に嘘の説明をし、その分、補習を受けられるようにと願い出た。
手術を請け負ってくれる病院が園長の尽力でどうにか決まった。
300万の手術費用は杞憂に過ぎなかった。
入院代も含め、全額を負担すると中里家から申し出があったからだ。
美緒にもいくらか見舞金が支払われることになり、それでこの件は示談となった。
「……手術が終わったら、もうなにもかも忘れて、身体を治すことに専念しなよ。4月から温泉ホテルで働き出したら、いい人がきっと見つかるよ」
美緒の部屋に食事を届けてくれたみどりは、事がひと段落してホッとした表情で言った。
美緒は、病気療養中ということになっていて隔離された生活を送っていた。
学校から帰るとすぐに自室に篭り、食事は朝も夜も、部屋に運んできてもらってテレビを見ながら食べた。