恋よりもっと―うちの狂犬、もとい騎士さま―
由宇は、こんな大きな身体して憎まれ口ばっかり叩くせに、ふたりきりでもそうじゃなくても割と距離を嫌う。
一度こういう関係になってからは余計にだ。
同じ空間にいたがるし、何をしててもすぐ触れるくらいの距離にいる事がほとんどだ。
何度か甘えん坊だよねと聞いたら、そんなわけねーだろとか、それはおまえだろとか誤魔化す言葉しか返ってきた事がないけど、確実にそうだとこっそり思ってる。
服の裾から入り込んできた指先が脇腹の辺りをなぞって上ってくるから、そのくすぐったさに身をよじる。
「おまえにしか発情しない狼ならいーだろ」
すぐにくっつきたがる事は認めたのか、由宇が言う。
「まぁ誰にでも見境なくこういう事するよりはいいけど」と言うと、おでこにキスをしながら由宇が笑った。
「その前に俺は狼じゃねー」
「まだ気にしてたの、それ」
思わず笑いながらじゃあなんなのと聞くと、意味深な笑みを返される。
そして、近づいてキスする直前に「おまえの好きでいい」と言った。