恋よりもっと―うちの狂犬、もとい騎士さま―


無理やり会話を終わらせた由宇が、私の服をめくり上げる。
由宇の前にお風呂を済ませたから、上に着ているのはパジャマだけで。
そのせいで簡単に肌が由宇の目に晒されてしまって、慌てて両手で胸を隠した。

「今更照れる必要もねーだろ。何回してると思ってんだよ」
「何回したって恥ずかしいものは恥ずかしいの! それに何回もしてるって言うなら、今日くらいしなくてもいいでしょ」
「どんな理屈だ。何回してよーがおまえが目の前にいればしたくなるだろ」
「それこそどんな理屈?! いつも言ってるけど、私したくない時もあるんだからね。
年中盛ってる由宇とは違うんだから」
「別にいいだろ。おまえにしか盛ってねーんだから」
「えっ、否定しないって事は本当に年中盛ってるの?! 毎日?!」
「さぁ……。分かんねぇから梓織相手に検証してみるか」

そう言いながら私の手を掴んでどかした由宇が、それぞれの手を頭の脇で押さえつけてからゆっくりと近づいて首筋に顔を埋める。

いつものパターンだ。
嫌がる私を押さえつけて時間をこれでもかってほどかけて溶かす行為。
私が抵抗なんて言葉も羞恥なんて感情も、何もかも忘れて由宇に溺れるように仕向けた、誘導作業。

「明日も、仕事なのに……」

気付けば由宇は私の手をもう押さえてはいなくて。
いつ手が離れたのかも分からない自分に嫌気が差しながら右手の甲で顔を隠すようにしてそう漏らすと、由宇は私のおへそあたりに唇を押し付けながら答える。


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