恋よりもっと―うちの狂犬、もとい騎士さま―


由宇と初めて逢ったのは、小学校五年生の時だった。
家のお手伝いさんの星崎さんの息子として紹介されたのが最初だ。

同じ歳だから一緒に勉強をしたらどうだってお母さんが提案したのは、由宇の成績がいいっていうのを知っていたからだと思う。
一緒に勉強させたら、私の成績も上がるんじゃないかって思っての提案。

金融会社の次期社長娘として生まれた私を、お母さんはなんとか頭脳明晰に育てようとした。
今の時代は女も活躍できるから、死ぬ気で勉強をしていい大学を出て高学歴を残せばきっとって。

だけど、勉強しても勉強しても、私の頭には学習した事のほんの少ししか記憶されなくて。
お母さんの瞳に失望が広がっていくのが嫌だったから、それこそ死ぬ気で勉強した。

逆に言えば、それ以外でお母さんに必要とされる方法を知らなかった。

でも、私がどんなに勉強に時間を費やしてもそれが報われる事はなくて、そんな私にお母さんは声を荒げる事が多くなった。
お父さんは間に入っていつも私を守ってくれたし、私は何も悪くないって言ってくれたけど、そのせいでお母さんとケンカする事が増えていって。
私の目から見ても元々上手くいっていなかった夫婦関係はどんどん悪化していった。




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