恋よりもっと―うちの狂犬、もとい騎士さま―
「私が10人の芸能人に言い寄られてるところを想像してください」
今日は何事もなく仕事が片付いたから、珍しく定時上がりだ。
おかげで、いつもは待たせている立場なのに、今日ばかりは私の方が先に会社を出て由宇を待つ事ができた。
別に、待たせたからって由宇は怒らないし、いいって言ってるのに自ら望んで待ってるんだから私がどうこう思う必要もないのだろうけど。
なんとなくいつも待ってもらっても申し訳ない気もしないでもなかったから、たまには待つ方の立場に回れてよかった。
先にいた私に少し驚いた由宇が「おまえが先なんて珍しいな」と言った後の言葉が、私が10人の芸能人に~だったから、由宇は顔をしかめて私を見た。
多分、返事としては明らかにおかしいし、質問するにしても突拍子がなさすぎたからだ。
「なんだ、それ。心理テスト?」
「いいから想像してください」
「イライラする」
「イライラしても、想像してみて」
「想像した結果イライラするっつってんだよ。
なに、昨日そんなにしたくなかったのかよ」
昨日の夜、嫌がってた私を押し倒した事への仕返しだと思ったのかそんな事を言う由宇の言葉は無視して、次のテストをする。