恋よりもっと―うちの狂犬、もとい騎士さま―


「じゃあ、横田さんが20人の美形男子を従えてるところを想像してください」
「……興味がねぇ」
「だから、興味なくても想像してみて」
「だからっ、想像した結果興味ねぇって事。
なんなんだよ、さっきから」

本格的に機嫌を損ねそうな由宇に、これ以上のテストは諦めて想像力を試したかったと説明する。
今日のお昼休みの事を含めて。

絶対に、「おまえの想像力が欠落してるだけだろ」って笑われるだろうなーとは思ってやめようかとも思ったけど。
もしかしたら由宇にも同じような事ってないのかなっていう期待みたいな方が勝ったから。

突然わけの分からないテストを受ける羽目になった理由を聞いた由宇は、不思議と私をバカにしようっていう口ぶりは見せなかった。
だから、「中一のバレンタインの事も覚えてないし私の記憶チップみたいなの足りてないのかな」と自ら言ってみたけれど、それでもからかってくる様子はなくて。

「俺は中学も高校も同じクラスになったヤツの半分の名前も覚えてないくらいだし、10年も前のバレンタイン覚えてなくても普通だろ」

まさかのフォローに驚いていた私に、由宇は「まぁ、おまえは元から頭強くないからな」と嫌味を付け足す。
最近の由宇は、やきもちを焼けないって話でも、想像力が足りないって話でも擁護に回るから少しおかしいなと感じていたけれど……。

今の嫌味を聞いて、いつも通りなのかなと感じていた疑問が消えていく。
やっぱり由宇は由宇だなと呆れ半分、安心半分のため息がこぼれた。


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