恋よりもっと―うちの狂犬、もとい騎士さま―
そして、私が私立中学の受験に失敗したのを機に決まった、お父さんとお母さんの別居。
お父さんはただ自分がふがいなかったせいだって私に謝ったけれど、別居の理由には私の出来の悪さが関係している事は明白だった。
社長の娘としてプライドを持って育てられたお母さんは、頭がよくてまさにキャリアウーマンって感じの人だ。
そして事業拡大のため、お父さんを婿養子にする形で政略結婚をして私が生まれた。
お父さん自身はのんびりしていて優しい人だけど、仕事はできるから。
厳しいお母さんの目にも適ったようで、仕事に関してはお母さんからお父さんに文句を言う事は一度もなかったように思う。
周りの人間みんなが頭がキレる人だったのに実の娘の私だけがダメだったから、余計にお母さんをイライラさせてしまったのかもしれない。
自分の娘ができが悪いなんて誰にも言えない。
直接そう言われた事はなかったけれど、そう思われているのは小さい頃から分かっていた。
だから、それ以上嫌われないようにって勉強ばかりをして……。
それは、お母さんが出て行ってしまった後も変わらない。
――試験で平均点いかなかったら。検定に落ちたら。
お父さんに……由宇に呆れられたら。
そう考えるだけで怖くて不安で仕方なくなってしまう。
勉強はしたってできないし好きでもないのに、教科書を開いていないと落ち着かない。
私の価値は学歴でなんか決まらない、お父さんは何度もそう言ったけれど、深くまで根付いたトラウマには届く事はなかった。