恋よりもっと―うちの狂犬、もとい騎士さま―



帰り支度をしている時に、不意に目に入った卓上カレンダー。
それを見て「あ……」と声を漏らすと、隣に座っている広兼さんがこっちを見た。

「どうかした?」
「今日って火曜日だったんですね……。忘れてました」

私が言ったのはそれだけだったのに、広兼さんはそれですべてを理解したらしく。

「ああ、名取くんの件ね!」

私が言わんとしていた事を見事に言い当てた。
先週くらいに、なんだか最近楽しいみたいな事を言っていたけど、本当にここ二週間くらい広兼さんは楽しそうだ。

「星崎さんにはちゃんと言ったの?」
「それがちょっとタイミング逃しちゃって言えてなくて。
とりあえずメールだけしておきます」

言わなかったのとメールで言っておいたのとでは怒り方が違うと思い、すぐに携帯を鞄から取り出す。
点滅しているランプに、なんだろうと画面を表示すると、未読メールが一件届いていて由宇からだった。

内容は、今日は急きょ課での歓迎会になったから一緒に帰れないって事と、気を付けて帰るようにって事、そして遅くなるようならお父さんと一緒に帰れって事だった。



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