恋よりもっと―うちの狂犬、もとい騎士さま―


会社から徒歩10分くらいでついたイタリアンのお店は本当に人気店らしく、19時半過ぎについた時には既に満席だった。
お店の前に並んでいる人数を見る限り、名取くんが予約してくれていなかったらきっと、1時間から待ち時間があったかもしれない。
お寿司屋さんやラーメン屋さんと違って、食べてすぐ帰るお客さんなんてそうそういないだろうし。

オレンジ色の暗めのダウンライトと、それぞれのテーブルにひとつつり下がっているガラスキューブのペンダントライト。
床はワインレッドの絨毯で、壁はグレイに黒の欧風の葉の柄が入ったものだった。

オシャレで可愛い造りを見て、これは絶対女の子に人気出るなぁと思わずにはいられないものばかり。
テーブルだって脚の部分がきれいに彫られていて、床についている部分は猫足みたいに折れ曲がっていて、椅子もしかり。

そんな中で、予約席という他のテーブルよりも少し特別な造りになっているテーブルに案内されて……。
待ち時間が出ているのにストレートにこんないい席に通してもらうなんて、本当に至れり尽くせりだ。

こんな素敵なお店でこんな手はずを整えてもらえるなんて、思わずテンションを上げずにはいられない店内のハズなのだけど……。
上がるどころかローテンションのままの自分が不思議だった。

理由が、今目の前にいる相手が由宇じゃないからっていうのは分かっているけれど。


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