恋よりもっと―うちの狂犬、もとい騎士さま―


メニューを見て、ホウレン草と生ハムのクリームパスタを頼んでから名取くんと適当に会話をする。

仕事の事がメインだったからそこに少し安心したりして。
だってまた由宇の悪口が出てきたら、私はきっとうまく愛想笑いできなくなっちゃうと思ったから。

内線を使ってまでして連絡をとってきたのに、名取くんの話は食事中終始仕事やテレビ、趣味の話と、軽い話題ばかりだった。

あと、隣を歩いている時に気づいた、名取くんのつけている香水の話題とか。
香水好きのお姉ちゃんがいるらしい名取くんは、普段からお姉ちゃんに色々説明をされるらしく、意外と香水に詳しくて驚いた。
私も由宇も普段つけたりしないけれど、私は少し興味もあるし実際自分でもいくつかは持ってたりするから、どんな香りが好きだとか、コレがおすすめだとか、そんな話もした。

由宇や広兼さんが、名取くんは私に気があるなんて事を言っていたから、もしかしたらそうなのかもと警戒していたのだけれど……。
今の様子を見ている限り、私の勘違いだったのかもしれないなと思う。

この間、由宇と言い合いみたいになってた時は、確かに私の事を少し気にかけてくれてるのかなって気はしたけれど、今日の様子を見る限りはそんな感じはしない。

お店を予約してくれてたりしたのも、ただ単に優しいからだって説明がつくし。

由宇が、私の事鈍い鈍い言うから、パスタを食べながら入念に名取くんの視線に込められている意味だとかを探ってみたけれど、そこに恋愛感情はないように見えた。


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