恋よりもっと―うちの狂犬、もとい騎士さま―


聞き返されると思わなかったのか、名取くんは戸惑いながらそう答える。
名取くんの答えを聞いて、由宇が言ってた通り、名取くんは私に気があるのかなと再度考え直していた。

私自身自分の恋愛感情すらよく分からないのに、他人の恋愛感情を見抜くのって本当に難しい。
由宇の助言がなかったら、私は多分、こう言われても名取くんが自分に気があるなんて考えもしなかったハズだ。

こんなだから、鈍い鈍い言われるんだろうけれど……。

「ありがとう。でも、もうふたりで会ったりはできない。
本当は今日だって断ろうと思ってたの。名取くんがお店予約しちゃったって言うから、申し訳なくてついてきたけど……。
だから、ごめんなさい」

浅く下げた頭を上げると、名取くんは少し呆けていて。
それから、顔をわずかにしかめた。

「分かった……。分かったけど……それって、星崎に何か言われたから?」
「え?」
「姫川、星崎にいいようにされてるんじゃないのか? あいつ、高校ん時からちょっとおかしいじゃん。
俺のアドレスだって姫川の携帯から勝手に消したんだろ? 普通そんな事しない」
「由宇は……おかしくなんかないよ」

話が嫌な方向に行き始めて、気持ちにもやもやとした苛立ちが混ざってくる。

自分はもっと由宇に対して失礼な事や暴言を吐いているのに、他人が言っているのを聞くのは嫌なんだから、私もわがままなんだろうけれど。
自分以外の誰かが由宇を悪く言うのはすごく嫌だった。

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