恋よりもっと―うちの狂犬、もとい騎士さま―
でも確かに私を抱えていたせいで由宇もびしょ濡れだし、お父さんが出て行った後、まぁおじさんが言うならと服を脱ぎ始めちゃったから。
由宇は丈夫だし少しくらい放っておいても大丈夫なのにと思いつつも、私もぺったりと肌にくっついている服を脱いでいく。
そして由宇に先に入ってもらってから全部脱いでバスタオルを巻いた。
まさか家のお風呂でバスタオル巻いて入る事になるとは思わなかったけれど、いくら由宇相手でも裸で入るわけにもいかないから仕方ない。
浴室に入ると、由宇は今更隠す必要あるのかって目で見てきたけれど、それを口には出さなかった。
さっきまではうるさかった由宇が急に大人しくなっているように思えて、不思議に思いながら浴槽に入る。
由宇と向かい合うように。
うちのお風呂は普通のサイズよりは少し大きめだけど、大人ふたりで入るとさすがに広々使う事はできなくて、由宇が堂々と伸ばしている足の間に体育座りする形で入る事にした。
湯気が立ち込める浴室でこんな風に由宇とふたりで向かい合ってるってなんだか不思議だ。
「おまえがズレてんのっておじさんの遺伝だよな。普通、娘を男と一緒に風呂なんか入れないだろ」
急にふっと笑った由宇がそんな事を言い出すから、私も同じように笑う。
「私もさっき同じ事考えてた。でもそれだけ由宇の事信頼してるって事なんじゃない。家族同然だと思ってるんでしょ」
「こんな状況になっても梓織に手を出さないだろうって信頼なら、もうとっくの昔に壊してんのにな」
「……言っておくけど、ここで変な事しないでよね」
「しねーよ。風呂場じゃ声も響くし、第一、時間かけらんねーし」