恋よりもっと―うちの狂犬、もとい騎士さま―
「分かるもん!」
「分かってねーだろ」
「分かるってば! やきもちかは分からないけど……でも、今回の事で初めて感じた気持ちもあったんだから。
きっとそれがやきもちって事でしょ」
私が言った言葉がすごく抽象的だったから、由宇は訳が分からなそうに顔をしかめて、水の攻撃をいったん止める。
「なんだよ、初めて感じた気持ちって」
「由宇に拒絶された瞬間、一瞬で何も見えなくなったの。全部が壊れていくような……変な感じだった。
まるで、お母さんの事で落ち込んでいた時と同じような感じ」
由宇は驚いたのか、わずかに眉を寄せて真剣な瞳で私を見ていた。
「それ、今日が初めてか?」
「うん。さっきが初めて。だって由宇が私をあんなに強く拒絶したのって初めてだったから」
あれがやきもちだとしたら周りの人ってなんて大変なんだろうと思う。
あんなの事あるごとに感じてたら本当に壊れるんじゃないのかな。
由宇は嫉妬深いらしいけど、私が名取くんと話したってだけであんな感じになるんだろうか。
だとしたら、さっきの拒絶も仕方ない事なのかもしれない。