恋よりもっと―うちの狂犬、もとい騎士さま―
「もしかして、一発芸とかさせられて恥かかされたの? それとも、セクハラ受けた?」
目の前までいってその表情を覗くようにして見つめると、由宇はじっと視線を返してからふっと笑った。
「一発芸はいいにしても、男の俺がどうやってセクハラ受けるんだよ」
「だって、横田さんとかが由宇を狙ってるって広兼さんが言ってたから……。
お酒の席だと身体触られたりするでしょ? だから」
ただ心配して100%の善意で言っている私に対して、由宇はなぜか顔をしかめる。
ありがとうって微笑まれる覚えはあっても、こんな怖い顔される覚えはないのに……。
「なんだよ、その当然みたいな言い方……。おまえもしかして飲み会で触られたりしてんのか?」
「いつもじゃないけど、たまにはあるよ。って、話題変えないで。今は由宇の話でしょ」
「たまに触られてんのか?! なんで言わねーんだよ!」
「え、だってお酒の席だもん。みんな正気じゃないし、それにネチネチ触られてるんじゃなくてさらっと触られるだけで……」
「さらっとどこを?」
「……肩とか、お尻とか」
答えながらチラっと見ると、由宇が今にも、なんで言わねーんだよ!とか怒鳴りそうな顔をしていたから、それより先に口を開く。