恋よりもっと―うちの狂犬、もとい騎士さま―

「え、なによ。何かあった？　私今日機嫌いいから聞いてあげるわよ」

聞いてあげるというか、いつもどんな時でも例え私が嫌がったって聞きたがるじゃないですか、とは言わずに素直に話す。

「何もないんですけど……なんか、最近由宇も私もおかしくて。
っていうより、由宇がおかしいと私も連動しておかしくなっちゃう感じなんですけど。
由宇が何か隠してるんですよね、多分」
「なにそれ、すごいおもし……じゃなかった。具体的にはどんな風に？」
「おもしろそうって思ってるの、もう顔で分かってますから」

ニヤける顔は無意識なのか。
ごめんねーと面白がっている事を否定するわけでもなく笑う広兼さんに口を尖らせつつ、続ける。

「由宇が最近やけに私の様子を気にかけてるっていうか……」

怯えてるっていうか……と呟きながら首を捻った私に、広兼さんは眉をしかめる。

「怯えてる？　何に？」
「分からないんです。でも……うん、怯えてるって感じがして心配で」
「随分漠然とした話ねー」
「本当にそうですよね。私もなんとなくそう感じるってだけで確信も何もないんですけど……でも、そんな気がして」

由宇から何かを聞いたわけでも、どこがどうおかしいって具体的にあげられるわけでもない。
それでも、私が感じた直感が間違えてるとは思えなくて。

わけの分からないもやもや感に目を伏せてため息をついていると、広兼さんが言う。