恋よりもっと―うちの狂犬、もとい騎士さま―
振り向くと、こちらを見ているひとりの女の子が立っていて。
その子は、由宇を見つめて頬を赤らめて微笑む。
見覚えのある子だった。
「やっぱり。星崎くんでしょ? 私、中学の時同じクラスだった半田美里だけど……覚えてる?」
半田、美里……。
その名前を聞いた途端、中学の頃の彼女を思い出し、ドクンと心臓が大きく波打った。
ざぁ、と身体中に記憶が広がる。
中学一年生の時、同じクラスだった子だ。
出席番号が前後だったから仲良くなって……うちにも何度も遊びに来た事があった。
お母さんの事があって塞ぎこんだりもしていたけど、それでもたくさん声をかけてきてくれた美里ちゃんは、私の中でも特別な友達で、でも……。
「梓織? 大丈夫か?」
由宇が私の顔を覗き込むようにして聞く。
美里ちゃんの問いに答えていないし、こんな風に彼女の存在を無視しているのはよくないと頭のどこかで思ったけれど。
一瞬にして、そんな事どうでもよくなってしまう。
異常なくらいに湧き上がってきた由宇への独占欲と、由宇は渡さないっていう焦りにかき消されて。
今まで感じた事のない想いが溢れて、気持ちが悪い。
知らなかったハズの激しい嫉妬心みたいなものに身体の中全部が支配されて、目の前がグラグラ歪んで見えた。