恋よりもっと―うちの狂犬、もとい騎士さま―
言葉じゃ素直になれないけど、何かあるといつも由宇の傍にいた。
そうするだけで気持ちが落ち着いていくから。
学校で嫌な事があっても、お母さんとの事を思い出して落ち込んでしまっても、由宇と一緒にいる時間に慰められて、憎まれ口を叩けるくらいに元気になれた。
それまでの私は、誰かに甘えるとか、そういう事を上手くできないでいたけど、由宇には甘えていたんだと思う。
遠慮なしでケンカができているのが何よりの証拠だ。
気持ち全部をぶつけられる由宇は、誰よりも大事で……愛しい人だった。
そんな時だった。あの出来事が起きたのは。
「――梓織、気付いたかい?」
目を開けてぼーっとしていると、そんな声が聞こえてきた。
天井を見つめていた視界をぐるりと移動させて左を見ると、スーツ姿のお父さんがいた。
お父さん……と呟くと、ホっとした顔をされる。
自分の部屋で寝ていたのはなんでだろうと疑問に思って、すぐに美里ちゃんとの事を思い出した。
そうか。私はあのまま気を失って、それで……。