恋よりもっと―うちの狂犬、もとい騎士さま―
名取くんは、由宇が私を檻で囲んでるって言ってたけど……やっぱりそれは違う。
由宇は、私がいつでも存在を感じられるくらいの距離から、いつも守ってくれてたんだ。
私が感情をうまくコントロールできずにこぼしてしまわないように。
引き金に手をかけないように……ずっと、傍で見守ってきてくれたんだ。
いつまた自分を忘れられてしまうかもしれないという不安を感じながら。
自分が盾になって、私を守ってくれてた。
私を狭い世界に押し込めるんじゃなく、傷つかないようにそっと抱き締めて。
「まぁ、元からの性格もあったから、特に意識して梓織の傍にいたってわけでもないけど。
ただ……進路の事とかで梓織にまだ残ってる傷みたいなモンに気づくとちょっと意識してたってくらいで」
「進路……。だから、私が自分の進路をハッキリ決められなくても何も言わなかったの?」
「ああ。本当は、そういうのは心理カウンセラーとかにかかって、トラウマと向き合って解消する必要があるらしいけど……中学の初めの頃、無気力になった梓織を目の当たりにしてたから。
無理して向かい合う必要もないんじゃないかっておじさんと話した。
梓織が不安定になるのは、進路とかそういう自分の進む道を選ばなきゃいけない時くらいだったし、俺やおじさんがいれば問題ないんじゃないかって」
由宇の話に、思わず甘すぎるってもらすと、由宇がわずかに笑ったのが肩に落ちる吐息で分かった。