恋よりもっと―うちの狂犬、もとい騎士さま―
「しょうがねーだろ。おまえに甘い男ふたりで出した結論なんだから」
よかった。笑ってる。
そんな風に思って嬉しくなっている私に、由宇が続ける。
「おまえは、母親に出来が悪いって言われ続けたせいで、自分で未来を選ぶ事に無意識に恐怖を感じてきたし、多分それはこれからも簡単には治らない。
おまえ弱いし……それに、おまえが受けた傷は深い」
そう言った由宇が、私を抱き締める腕に力を込めた。
ぎゅううっと、苦しいほどに抱き締められて戸惑う私に、由宇が言う。
はっきりとした声で。
「だから、おまえがこれから選ばなくちゃいけない選択肢は、代わりに全部俺が選んでやる。
ずっと、一緒にいてやるから……おまえは何も不安がる必要ない」
随分と偉そうな言葉だったけど……嬉しくて、思わず目が熱くなる。
本当に甘い、と文句を言いながらも、由宇に抱きつく腕に私も力をこめた。
「私がいてあげるんでしょ。
忘れられるかもしれないって震えてる由宇の傍に、ずっといてあげるんだから。
由宇が泣き出さないように」
「いつ誰が泣いたんだよ。おまえだろ、泣いたのは」
「私だって泣いてないもん」
「泣いてたろ、こないだだって……まぁ、いい。とりあえず梓織、離れないとそろそろおじさんの視線が怖い」