恋よりもっと―うちの狂犬、もとい騎士さま―
襲われるのがオチだと思ってそう言ったのに。
「へー。俺を忘れて傷つけたくせによくそんな事が言えるな」
なんて、痛いところをつかれてしまい。
涼しい顔してこっちを見ている由宇を、じとっとした目で睨みつけた。
「私が思い出した途端、弱味として使うとか最低。卑怯者」
「そういう憎まれ口並べる前に、おまえが忘れてた約10年間、一言も言わずにきた俺をまず褒めるべきだろ」
「すごいね由宇ありがとう。この卑怯者」
「いいからこっちこいって」と言う由宇に、ため息をつきながら立ち上がりベッドに近づく。
そのまま腰掛けると、すぐに由宇の腕が身体に巻きついてくるから。
「勉強できないんだけど」
そう言ったのに、私を抱き寄せた由宇はふっと笑う。
「する気なんかないくせに。問題集机に置いてきたじゃねーか」
「どういうわけか勉強させてもらえない予感がしたから」
「殊勝だな。ベッドに持ってきたら問題集ぐしゃぐしゃになるところだったし」
後ろからぎゅううっと抱き締める由宇に、胸が同じようにぎゅううっと締め付けられた。
いつもよりも力強い由宇の腕に、まるでしがみつかれているような気持ちになったから。