恋よりもっと―うちの狂犬、もとい騎士さま―
実際、由宇が離れていくならってその時のショックから自分を守るために由宇の記憶を消したんだから。
それなのに由宇は……そんな自分の事しか考えていない私を責めずに、また近づく事を選んだ。
また、傷つけられるかもしれないのに、私に近づいた。
「こんな面倒な女……嫌なんじゃないの。
意地っ張りだし素直じゃないしわがままだし……由宇だっていつもそう言ってるくせに」
後ろから抱き締める腕を、ぎゅっと両手で掴みながら言う。
いつの間にか、涙が溢れていた。
「私なんかにこだわらなくたって……由宇なら色んな女の子選び放題じゃない。
なのになんで……傷つけた私なんかと一緒にいるの……。
なんでそんなに、大切にしてくれるの……」
私に忘れられた由宇がどんな気持ちだったか、この10年間、由宇がどんな思いだったのか……。
傷を抱えたままどれほど深い愛情で、隣から見守ってきてくれていたのか。
それが、抱き締める由宇の身体から伝わってくるようで……溢れる想いが止まらない。
温かいぬくもりに、大きすぎる想いに、涙が流れ続ける。