恋よりもっと―うちの狂犬、もとい騎士さま―
「なんか、由宇の部屋入るのってすごく久しぶりな気がする」
私の涙が収まったところで、由宇は見せたいものがあると自分の部屋に来るように言った。
言われるままついていって、部屋に一歩踏み入れたところで、この部屋に来るのがすごく久しぶりな事に気づく。
由宇は大体私の部屋で過ごすから、由宇の部屋に行く事はほとんどなかった。
寝起きもいいから朝起こすとかそういう事もなかったし。
だけど……もしかしたら、それは由宇が意識して私を部屋に近寄らせなかったのかもしれない。
私が、美里ちゃんと由宇の事を思い出さないようにって。
そして多分、私自身も無意識にこの部屋に立ち入らないようにしていたんだと思う。
あの記憶にフタをして……。
そうじゃなければ、同じ家に住んでるのにここまで久しぶりなんておかしい。
10畳弱ある由宇の部屋は、閑散としていた。
ベッドと机、そしてラックがあるだけ。クローゼットがあるから、服関係は全部そこに入ってるんだろうけどそれにしたってとツッコみたくなるような寂しさだ。