恋よりもっと―うちの狂犬、もとい騎士さま―


自分を守るために、由宇への気持ち、全部をヴェールで包んでぼんやりとしか見えないものにしてた。

そんな臆病な私を、由宇は……10年近くもただ見守っていてくれてたなんて。
この短気な由宇が、はっきりしない事が嫌いな由宇が……ただ、10年近くも待っていてくれたなんて信じられない思いで一杯だった。

見つめ合ったまま、ゆっくりと握った手を胸の高さまで持ち上げる。
そして、胸の前でその手を両手で抱き締めた。

「私、もう手伸ばせるよ。由宇が待っててくれたから……もう大丈夫」

大丈夫。
もう一度繰り返し言った私を、由宇はまだ心配なのか少し困り顔で見ていた。

そんな由宇に、笑顔を向ける。

「美里ちゃんとだってもう、真正面から戦えるんだから。
ただ、自分の気持ちさえコントロールできなかったあの頃とは違うもの。これからは、由宇が誰かに獲られそうになっても、自分で勇敢に戦って取り返す」

「それでも、また由宇を忘れたら引っぱたいてショック療法で思い出させて」そう告げた私を見つめていた由宇は、少ししてからふっと笑みを浮かべた。


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