恋よりもっと―うちの狂犬、もとい騎士さま―
お母さんに見捨てられた事が私の中で深い傷となり、色んな想いに足枷をつけ鍵をかけてしまっていた。
由宇を想う事にも、未来に向かって手を伸ばす事にも。
けれど、その足枷はもうない。
由宇と過ごした10年間の思い出や、由宇の10年間の想いがすべてを溶かしてくれたから。
もう、大丈夫だ。
由宇と若干強引にではあったけれど、想いを確かめ合った翌朝。
ベッドの中で天井に向かって伸ばした手を眺めながら、そんな事を思った。
もうきっと大丈夫だし……それに、そうじゃなきゃいけない。
由宇を、もう二度と不安にさせないためにも、私がもっと強くならなければいけないんだから。
今まで散々守られてきたんだから、今度は私が――。
決して気負うわけじゃなく、心の底からそう思った。
由宇に支えられて支え返していく。
まるでそうする事が当たり前のように、由宇の為にも強くありたいと思えた。
私はもう……お母さんに捨てられてただ傷つく事しかできなかった、あの頃の私じゃない。
欲しいモノは、ちゃんと手を伸ばして守るんだ。
「ところで……ふたりは付き合っているのか?」
スッキリした頭で迎えた朝。そして、お父さんと由宇と囲む朝ごはん。
その席で、おはようって挨拶したっきりずっと黙り込んでいたお父さんが急にそんな事を聞いてきた。