恋よりもっと―うちの狂犬、もとい騎士さま―
星崎さんもまさか自分の息子がこんな事を言い出すと思わなかったのか、どうしたらいいのか分からないといった顔でこちらを見ていた。
手元では、こぼしたオレンジジュースや割れたグラスの破片を拾いながら。
居たたまれない気持ちになって俯いていると、「一体いつから……」と呟くような声が聞こえてきて驚く。
「え……本当に気づいてなかったの?」
気付いていたけど、それでも一応確認する意味で聞いただけだと思っていたのにと驚くと、お父さんは当たり前だろう!と強く主張した。
「ふたりが仲がいいのは知っていたが、それはあくまでも兄妹としてだとばっかり……」
「でも、由宇、夜だってあんなに私の部屋にきてたし……」
「それは、由宇くんが梓織の勉強を見てくれてるんだと、ありがたいと思いながら見守って……。
それに、梓織も年頃の女の子だし、父親を鬱陶しがったりもするだろうと思って部屋には寄らないようにしてたから、由宇くんがそんなに頻繁に部屋に行ってたのも知らなかっ……」
そこまで言ったお父さんが、ぴたりと止まる。
そして驚愕の眼差しで私と由宇を見た。
「まさか、そういう仲なのか……?!」
あああ、もう本当に勘弁して。
察してよ、もうっ!と心の中で叫びながら、どう答えるべきなのか考えていたけど。
沈黙は肯定と取られそうだし、あまり長い事黙ってもいられない。
だからといって、さんざんそういう事をしておきながらとぼけるのも……。