恋よりもっと―うちの狂犬、もとい騎士さま―
「おじさん、俺がただ勉強教えてると本気で思ってたのか。そんなわけねーじゃん。いい歳した男女が同じ部屋にいて何もないわけないし」
とぼけるのもどうかと思うけど!
だからって、こんなハッキリ……。
星崎さんが、もう片付けも手につかずにハラハラした様子でこっちを見てる事を由宇に教えてあげたい。
そう思って隣を見た時、由宇が軽いため息と一緒に言う。
「仕方ねーじゃん。好きなら手も出るもんだろ。俺がいい加減な気持ちじゃないって事は、おじさんにも十分分かってもらえると思うけど」
不貞腐れたような、そんな顔で言った由宇に、お父さんは黙る。
そして、しばらくしてから「まぁ……それは十分すぎるくらいに分かってるが」と歯切れ悪く答えて。
それから私たちに何かを言おうとしていたみたいだったけど。
「ちょっと待ってっ! 今、好きって言ったよね?
私の事、好きって言ったでしょ?」
お父さんが何か注意らしい事をしようとしているよりも、由宇が言った言葉の方が気になってしまって。
腕に掴みかかりながら聞く私を見た由宇は、ぷいっと顔をそむけて「さぁ」と答えをにごした。