恋よりもっと―うちの狂犬、もとい騎士さま―
「言ったじゃない! 往生際悪いっ!
ねぇ、お父さん、今由宇私の事好きって言ったよね?」
「……いや、梓織。お父さんは今大事な話をしようとしてだな」
「後で聞くから! 今はこっちの方が大事だもん! ほら、由宇っ!」
顔をしかめているお父さんを止めて、由宇の腕をぐいぐいと引っ張る。
一度もされていない告白をちゃんと由宇からもらいたくて。ちゃんと由宇に好きの言葉を認めて欲しくて。
すがるようにじっと見つめていると、私の眼力に負けたのか、由宇はほとほと呆れた顔をして私を見た。
「おまえ、俺にそんなに言わせたいのか?」
「うん。言わせたい」
「名取に言われてたのに?」
「そんなの、他の誰に言われたって由宇に言われなきゃ意味ないじゃない」
わざとなのか名取くんの名前を出して意地悪する由宇に少し怒りながら言う。
由宇は私の答えに満足そうに笑ってから……「梓織が好きだ」と今度ははっきりと私の目を見て言った。
お父さんのお説教を強引に遮って、由宇に無理やり言わせたくせに。
実際に言われてしまうとポカンとしてしまって、何も考えられなくなってしまう。
びっくりした気持ちばかりが占領する頭。
それでも、優しく笑う由宇にじわじわと嬉しさと涙が込み上げて私を包もうとしていた時。
由宇が視線をお父さんに向けた。