恋よりもっと―うちの狂犬、もとい騎士さま―


「っていう事だから、おじさん。梓織を俺にください」
「……は?」
「おじさんだって分かってるだろ。俺以上に梓織の事想える男なんかこの世にいないって。
どうせ遅かれ早かれ俺で手打つ事になるんだし、別にそれが今でもいいかと思って」

再び止まる、お父さんと星崎さんと私の時間。
私と星崎さんの時間はすぐに動き始めたけれど……お父さんの時間が戻るにはまだ少しかかりそうだ。

固まったお父さんに思わず笑ってから、隣に視線を移すと、呆れたような笑顔の由宇と目が合う。

「由宇のせいでお父さん、今日仕事にならないよ、きっと」
「大丈夫だろ。おじさんは有能だから」
「だけど、さすがに朝一で大事な一人娘をくださいなんて言われちゃったら動揺もするでしょ」
「しねーよ。おじさん、俺の事誰よりも信頼してるだろうし。よく考えるまでもなく、すぐオーケーの答え出すと思うけど」

「すごい自信……」と、呆れながら言った私を由宇は真面目な顔で見て。

「当たり前だろ。俺は誰が見ても認めるくらいにおまえを大事にしてきたんだから」

そんな事を言い出すから、胸が跳ねてしまう。


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