恋よりもっと―うちの狂犬、もとい騎士さま―
「見かけたの?! え、噂通りのイケメン?!」
「えっと、まぁ、はい……」
「背は? 全体的にどんな感じ?」
「背はえっと、177センチくらいで、一見冷たそうだし口も悪いけど、優しい部分もある感じです」
ちゃんと答えたのに。
広兼さんは顔をしかめたまま少し黙ってしまった。
まずい事でも言ったのかと不安になっていると、フリーズしていた広兼さんがようやく動き出す。
「姫川、どんだけ凝視してたの? っていうかそれ、見かけただけで分かるレベルを超えてるじゃない。話したりしたって事?」
「え、い、いえっ、話したりなんて全然! ただ、そんな感じがするなぁって事で……」
「ああ、そんなイメージって事?」
「あ、そうですそれです!」
由宇の事を知り尽くしているだけに、第一印象だけを答えろって言われてもどこまでがセーフのラインなのか分からなくて困る。
こうなってくると私に嘘を突き通すのは難しそうだし、今日帰ったら由宇と念密な打ち合わせをしないとダメかもしれない。
一問一答的なバイブルを由宇に作ってもらって持ち歩かないとマズイ。私だけの力じゃ絶対にバレる。