恋よりもっと―うちの狂犬、もとい騎士さま―
そう考えてから、ある考えが頭に浮かぶ。
そういえば、中学高校の時は当たり前のように関係をカミングアウトしてきたけれど、別にその必要はないのかもしれないとふと思った。
学生の時は友達と話す時間がたっぷりあったから例え誤魔化そうとしても無理だっただろうけど、会社は違う。
メインは言うまでもなく仕事だし、私語をする機会なんて昼休みくらいだ。
その中で由宇の話題になる事なんて、課も違うしそうそうないかもしれない。
少しの間は新入社員として騒がれるかもしれないけれど、それも半月くらいだろうし。
だったら他人として過ごした方がいいかも。
由宇にとっても私にとっても、わざわざ関係をバラすメリットなんてないじゃない。
そう思いついて、パっと目の前が明るくなった気がした。
由宇がわざわざ同じ会社に入社してくるっていうから、仕事でミスしたところとか見られてバカにされたらどうしようとか、由宇の事だから私なんかすぐに追い越されるんだろうなとか、色々考えたりして悶々としたりもしたけれど。
他人って事にしようって言っておけば、由宇だって社内で構ってこないだろうし。
ただの会社の先輩である私に向かって生意気な態度もとれないハズだ。