恋よりもっと―うちの狂犬、もとい騎士さま―
今まで一緒にいすぎて関係を隠すなんて事思いつきもしなかったし、由宇からも言われた事なかったから気づかなかったけど。
ここはおしゃべりの時間が無限にあった学校とは違う。会社だ。
仕事さえしていればそれで問題ないし、社内ではそれぞれの仕事がある。
わざわざ由宇との関係を言う必要なんてどこにもないじゃない。
黙っていれば由宇がうちに住んでる事でとやかく言われる事もないし。
メリットばかりだ。
デメリットなんてひとつもない。
私にしてはかなりいい考えだなと自負して、由宇に話せばきっと同じように「盲点だったけど、いいアイデアだな」と褒めるに決まってると思うとニヤついてしまう。
「広兼さん、うちの課って融資管理課と関わる事ってあまりないですよね?」
「んー、たまに資料の打ち出し頼まれるのと……あ、あと、火曜日のメール便の人がいっつも融資管理課のまでうちに置いてくからそれを届けるくらいじゃない?
なんで? まさかイケメン新入社員狙ってるとか?」
「いえ、逆で、あまり関わりたくないなって思って」
「ああ、万が一仲良くなったりしたら周りに騒がれたりして面倒だもんね。どうせみんな狙うんだろうし。
歓迎会なんてかこつけて、今日の帰り待ち伏せする人とかいそう」