恋よりもっと―うちの狂犬、もとい騎士さま―
広兼さんが呆れ笑いを浮かべながら言った言葉に、高校の時もそうだったなーと懐かしくなる。
由宇と一緒に帰ろうとして、クラスの子とかが声かけてたなぁと。
由宇もそこまでされてるんだから一緒に帰るくらいすればいいのに、それを振り切って私と帰ったりするから私に飛び火する羽目になって、「どういう関係なのよ!」って怖い顔した先輩とかに呼び出しを……。
そんな事を思い出してから、慌ててポケットから携帯を取り出した。
由宇が万が一私と帰るつもりで待ち伏せとかしてたらマズイ、先手を打っておかないと!と思ったから。
メール画面を開いて、別々に帰ろうって内容のメールを送る。それと、他人のふりしてって。
どっちみち由宇は新入社員だから最初の数日は残業なしだろうし、私は定時にはいつも上がれないから帰宅時間は別々にはなるだろうけど……念のため。
一緒に帰ったりなんかしたらまた中高と同じループを繰り返す羽目になるし、それは御免だ。
年齢と共に経験を積んだ分、由宇目当てで私に近づいてくる女子社員とかも多そうだし手が込んでそうだし。
女の世界は怖いっていうのはもう学生時代に由宇関連で嫌ってほど学んだから、こっちも巻き込まれないように手を打っておかないと。