恋よりもっと―うちの狂犬、もとい騎士さま―
それにしても今日は頭が冴えてるなぁと自分自身感心する。
由宇によくトロいとかどんくさいだとか言われるし、私自身あながち間違ってないとさえ思うのに、今日はちょっと違うかもしれない。
私も今年で五年目なわけだし、少しは成長したって事だったら嬉しいなぁと思いながら広兼さんとお昼を終えて課に戻る。
7人で構成されている預金管理課には、もう私たち以外の社員は席に戻っていた。
課長は50代で、40代の女性パートさんが三人。
20代社員が広兼さんと私と男性社員がひとりっていうメンバーで仕事をしてもう三年目だけど、今回も異動はなかったしあと三ヶ月はこのままいけそうで正直ホっとしてる。
人見知りってわけではないけれど、初めて会う人とか話す人に、何か思われたらどうしようって不安が常にあるから。
――要領が悪い事がバレたらどうしよう、頭の回転が悪いって思われたらどうしよう。
そんな、勝手に抱えた不安が余計に緊張を増幅させて、ますますキャパを狭くしている事は分かっているけれど、その不安はいつまで経っても拭えずにいる。
死ぬ気で頑張った結果をお母さんに認めてもらえなかった。
ただそれだけの事なのに、たったそれだけの事が今も私の中に深くまで根を張ってしまって、時々大きな不安に襲われる。
本当はお父さんも私に呆れてるんじゃないか。
本当は……由宇も、私を――。
そんな事ないって分かっているのにそんな考えに囚われて動けなくなる事がある。
昔も……そして今も。