恋よりもっと―うちの狂犬、もとい騎士さま―
「おまえ、そんなんでちゃんと働けてんのかよ」
「由宇に心配してもらわなくてもちゃんと働けてるし。
もう今年で五年目だし、五年目って言ったらベテランの域なんだから」
高校を卒業して入社した金融機関に勤め始めて早四年。
最初は先輩から教わった事のみをこなすだけでも大変で、一日が40時間くらいないと無理だと思ったけれど、さすがに五年目となると全然違う。
自分自身、要領が悪い事も勉強ができない事もよく分かってたから、仕事に対しては本当に必死だったし、よくやったと自分でも思うほどだ。
自分でも分かっているくらい努力したなら、こんな風にわざわざ由宇相手に自慢する必要もないんだけど。
こんな風に過敏に反応して言い返してしまうのは、心のどこかにある自信のなさの表れなのかもしれない。
「ベテランねー。梓織がベテラン社員として働いている会社って不安だよな、おじさん」
由宇は笑いながら私の右隣に座るお父さんに視線を向ける。
まさか由宇に加勢しないよね、と睨むように見ていると、そんな視線に気づいたお父さんは困ったように笑顔を作った。