恋よりもっと―うちの狂犬、もとい騎士さま―
あの女の人、確か横田さんとかいう人だ。
キレイですごく仕事ができるって噂を聞いた事がある。
きつい雰囲気に感じて、私はあまり得意じゃないけれど……由宇のコーチャーは横田さんなのかな。
まぁでも由宇なら怒られるような事もないだろうし大丈夫かと思いながら見ていると、由宇の姿を視線で追っていた横田さんと目が合う。
慌てて会釈したけれど、気付かなかったのか無視されてしまった。
「言えば取りに行ってやったのに。さすがのおまえでも内線くらい使えるんだろ?」
私からコピー用紙の入った段ボールを取り上げながら由宇が言う。
高校の時もブレザーにネクタイだったから、由宇のスーツ姿に違和感を感じなかった。
多分、なんでも似合うんだろうけど。
「バカにしないでよね。一日何本の内線とってると思ってる……」
そこまで言ってから、さーっと血が引いていく。
他人のふりしてってメールしたのに!
由宇が普通に話しかけてくるからついうっかり普通に返しちゃったじゃない、もう……っ!
恐る恐る隣を見ると、広兼さんが驚いたような目で見ていて、慌てて由宇に視線を戻した。