恋よりもっと―うちの狂犬、もとい騎士さま―


うちに居候してるだとか、うちのお手伝いさんの息子だとか、そんな風に答えたのか心配になって聞く。

別にお手伝いさんの息子だからってどうこう言われたりするなんてないとは思うけど……過去に一度由宇がからかわれてたのを知ってるから不安だった。
お嬢様の犬みたいだなって、中学の頃他の男子にからかわれてたのを知ってるから。

もういい大人だし、周りにそんな風に言ったりする人はいないとは思うけど……万が一由宇が悪く言われたりしたらと思うと嫌で堪らなくて。

だから聞いたのに、由宇は誤魔化すように目を逸らした。

「普通だって言ってんだろ」
「それじゃ分からないから聞いてるんじゃない! ちゃんと答えて」
「おまえが困るような言い方はしてねーよ」
「じゃあ教えられるでしょっ」
「あー、もう、うるせーな」

本当に嫌そうにそうこぼした由宇に、思わず足が止まる。
それに気づいた由宇も数歩先で立ち止まって私を振り向いた。

そして黙ってうつむく私に軽くため息をつく。

「何が気に入らないんだよ」

カっとなって顔を上げて言い返そうとした。
けど……そんな言われ方をされると、まるで私のわがままみたいに思えて何て返せばいいのか分からなくなる。

由宇の怒ったような呆れたような瞳が、見ていられなくなってまた俯く事しかできなかった。


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