恋よりもっと―うちの狂犬、もとい騎士さま―


「今日の朝、梓織ちゃんと一緒に帰るよう言おうと思ったのにバタバタしててすっかり忘れちゃったのよ。
帰り道、ひとりじゃ怖かったでしょう? 随分慌てて帰ってきたみたいだったし」
「ううん。由宇が……帰り待っててくれたから一緒だったし」
「あ、そうなの?」
「うん。でも家の前でケンカになって、先に帰ってきたんだけど……だから慌てて階段上がっただけ。
騒がしくしてごめんなさい」

考えてみればあんな風に家の中をバタバタ走り回るなんて久しぶりだったなと恥ずかしくなりながら謝ると、星崎さんは驚いた顔をしてからにっこり微笑んだ。

「子どもは騒がしいくらいが丁度いいのよ。
それに梓織ちゃんの家なんだもの。何も我慢する必要なんてないわ」
「うん……でもさすがにもう22だし家走り回っちゃダメかなって」
「ふふ。それはそうかもしれないわね。
ケンカだって、どうせ由宇が何か気に障るような事言ったんでしょう? あの子は本当に口が悪いから」

誰に似たのかしらと首を傾げる星崎さんに「私が勝手に怒ってるだけだから」と苦笑いを返したところで、由宇が「ただいま」と帰ってきた。
玄関で靴を脱いでいる由宇に、星崎さんが「怪しい人いた?」と聞く。




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