恋よりもっと―うちの狂犬、もとい騎士さま―
「ぱっと見いなかったけど、男の俺の前には痴漢も出てこねーだろ」
「まぁ、それもそうね。あんた背もあるし無愛想だから、男の人から見てもおっかなそうだしね」
「とりあえず、家ん中まで入ってくるわけじゃねーし、戸締りだけしっかりしとけば大丈夫だろ。
梓織はこれから毎日一緒に連れてくるから問題ない。
……って事だから、聞いてんだろ、梓織」
ダイニングの壁に隠れていた私に言う由宇に、顔を見せてからぷいっとそっぽを向いた。
私はまだ怒ってるんだからっていう意思表示で。
確かに私が勝手にした事かもしれないけど、私だって由宇が心配だったからそうしただけなんだから。
私だって由宇を守りたいのに。
その気持ちさえ受け入れてもらえないのは納得できない。
だって、由宇だって変質者が出たから心配で私のメールを無視してまで関係バラして一緒に帰ったんじゃない。
自分は心配を押し付けておいて私の心配は受け取ろうとしないなんてどう考えたっておかしい。
私だって由宇の心配をする事くらい許されるハズだ。
それを、うるせーなだとか言う由宇の方がおかしいんだ。
由宇の、おまえは大人しく黙って守られてればいいんだよって感じが気に入らないし頭にくる。
昔から事あるごとに過敏に反応して私に何もないようにって細心の注意を払って……そんなだから、周りから私の犬なんて風に不名誉な言われ方しちゃうんじゃない。
由宇は犬なんかじゃないのに。