恋よりもっと―うちの狂犬、もとい騎士さま―
「ちょっとコンビニ行ってきます」
「え、こんな遅くに?」
「遅くないよ。まだ21時前だし、仕事でもっと遅くなる事だってあるし大丈夫」
「でも、痴漢だとか騒いでるのに……。そんな急ぎの買い物なの?
明日でよければ私が買ってきておくから、今日はもう……」
「大丈夫だよ。すぐ帰ってくるし。
それに……ちょっと急ぎだからどうしても今日行きたいの」
「じゃあせめて由宇が出てきたら一緒に……」
「由宇だってもう二度も家の周りの見回り行ったんだもん。疲れてるよ。
とにかく大丈夫だから」
粘る星崎さんを振り切って、靴を履いて玄関を出る。
真っ暗になった空にはもう雲はなく、星がいくつも輝いていて、角度の低い場所に三日月も見えた。
すっかり夜になった空の下をコンビニに向かって歩き出す。
コンビニまで歩いて五分かからないのにあそこまで心配する星崎さんは心配性だと思う。
そう考えて、由宇の心配性は星崎さん譲りなんだなと、納得して笑みがこぼれる。
星崎さんを心配させてまで、わざわざ今日買い物に行く必要もなかったのかもしれないけれど……。
どうしても今日中に由宇と仲直りがしたかったから。
由宇の好きなアーモンドが入ったチョコを買って、それをあげて仲直りしようと思って行動に出た。