恋よりもっと―うちの狂犬、もとい騎士さま―
「痴漢の人、顎割れてないかな……」
家に帰ると、心配して泣き出しそうになっていたお父さんと星崎さんが玄関先に立って私たちを待っていて。
お説教が始まりそうになったから、明日聞くからってお願いして今日は許してもらった。
それからお風呂に入って部屋に戻ると……ベッドに由宇が座っていて。
まぁいるだろうなと思っていたから、特に驚くこともなく隣に座る。
「おまえ、あんな変態男の心配すんなよ」
「でも、由宇、茶帯なのに本気で蹴り上げるから……。
私でさえ大ケガさせちゃったらどうしようって回し蹴りしなかったのに」
「例え顎が割れてても正当防衛だし、何の問題もねーだろ」
ため息をつく由宇に、過剰防衛にはならないのかなと気にもなったけど、まぁいいかと私も同じように息をつく。
それから……目を伏せて由宇に謝る。
「由宇……ごめんね」
「それ、どれの事謝ってんの?」
「由宇の事、散々変態だとか言ってきたけど……今日の痴漢が本当の変態だったから。
由宇は変態だったとしてもかなり軽度の変態だったんだと思って」
「どーでもいい話だな。
もっと他にあるだろ、謝るべき事が」
「あと、えっちなゲームしてもいいって言ったけど、やっぱり嫌」
「言われるまでもなくしねーけどそれも違う。次」
「……もうない」
答えると、由宇は思いきり顔を歪めて「はぁ?!」と私を非難した。