恋よりもっと―うちの狂犬、もとい騎士さま―


「おまえは素直なんだか素直じゃねーんだか分かんねーな」

そう言った後、由宇が真面目な瞳を私に向ける。

「俺が悪かった。……これでいいか?」

じーっと見つめていても由宇は真面目な顔のまま私を見つめ返していて。
きちんと謝ってくれてる事が分かって、嬉しくなって思わず笑みがこぼれる。

「仕方ないから許してあげる」
「そりゃどーも」
「あ、そうだ、チョコ……」

呆れたように笑う由宇に、コンビニ袋に入ったままのチョコが机の上に置きっぱなしだって事を思い出して立ち上がろうとした。
けど、腕をぐっと掴まれて、またぽすんとベッドの上に座ってしまう。

「なに? チョコ取りに行きたいんだけど」
「チョコなんか後でいいだろ」
「……チョコなんか? 私がせっかくあんな思いしてまで買いに走ったチョコなのに?」
「チョコは後でいいだろ」
「チョコは後でもいいけど……今はそういう気分じゃないから」

由宇が何をしようとしてるのかが分かって、先にそう断っておく。
時間だってもう遅いし、明日だって仕事がある。
だから断ったのに、由宇は私の肩を押してそのままベッドに押し倒す。

そして両手をそれぞれの手で押さえつけた。

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