恋よりもっと―うちの狂犬、もとい騎士さま―


食事を終えてお風呂に入った後、自分の部屋に戻って会社から持ち帰ってきた問題集を鞄から取り出す。
そしてベッドの上に寝転びながらその内容に目を通し始めた。

私が勤務しているのは金融機関だけれど、支店ではなく店舗を構えていない本店だから、お客様と直接接する事はまずない。
だから、業務に付随してくる検定も急ぎのものは特にないって事は先輩からも聞いているけれど。

今支店勤務の人たちが生命保険の試験やファイナンシャルプランナーの試験を受けさせられているっていうのをここ数年よく耳にするから一応勉強を始めた。

窓口のない本店勤務のうちには必要ないのは分かっているけれど、早いうちに始めておけば万が一試験を強制されても他の人と並べるくらいにはなれてると踏んでの試験勉強だ。
みんなと同じスタートラインじゃ、とてもじゃないけど無理なのは分かっているから。

つまり、そこまで私は要領が悪くて……まぁ、早い話が頭がよくない。
そしてそれは多分生まれつきで、改良の余地もここまで来るとないのだと思う。
友達と遊ぶのも控えてものすごく努力して勉強ばかりして私立中学の受験もしたけれど、惨敗だったのがいい証拠だ。

その後進学した公立の中学でも、誰よりも勉強したつもりだったけれど、成績は中の中。
周りと並ぶためには、私には人一倍の努力が必要なんだってその頃には気づいていたから、そこからはもう勉強ばかりの生活だったように思う。


< 6 / 214 >

この作品をシェア

pagetop