恋よりもっと―うちの狂犬、もとい騎士さま―


私が15分って自己判断したものは、広兼さんの計算だと30分弱かかるって事になるらしく。
15分で終わるって言ってるのに……とぶつくさ思いながら取りかかった仕事を終えて時計を見ると、12時55分を指していて……。
心の中で文句を言ってしまった事を、やっぱり心の中で広兼さんに謝罪する。

「あー、ごめん、姫川。後10分待って」
「あ、はい」

珍しく手こずっている広兼さんの手元には、相続関係の書類がたくさん重なっていて……それを見て残業を決意する。
書類を仕上げたら、それを他の誰かに確認してもらってその人の印鑑をもらうのが業務内の決まりだ。
広兼さんは十中八九この書類を、勉強だから!と私に回してくるだろうけど、相続関係の書類は難しくて複雑で正直一番苦手な書類のひとつだ。

午後に普通の仕事をした上、相続の書類確認なんて……。

そう思ってため息をつきそうになっていたところに、午後のメール便が届く。
広兼さんが仕事中だからと私が受け取って中を確認して……融資管理課のが例のごとく入り込んでいる事に気づいた。

多分もう、メール便を運んでくる人は、ここが融資管理課だと思っているんじゃないかと思えてくる。

火曜日の人がいつも勘違いしてるだけだと思ってたのに、今日は水曜日だ。
なのに今日の人までってもう課をあげての嫌がらせなんだろうか。

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