恋よりもっと―うちの狂犬、もとい騎士さま―
「まるで子どもね」
「子ども?」
「星崎くんが私と仲良くしてるの見て、やきもちでも焼いてるんでしょう?
私の事睨みつけたりして」
「やきもち……?」
「図星のくせにとぼけちゃって。見苦しいわよ、そういうの」
「あ、とぼけてるわけじゃなくて……だって、やきもちもなにも、星崎さんは横田さんに仕事を教わってるんですよね? 仕事なのになんでそこにやきもちなんか焼くんですか?」
ポカンとして答えると、横田さんは驚いた顔をした後、思いきり顔をしかめる。
私の言葉の何かが逆鱗にでも触れたのかもしれないけれど、そんな失礼な事は言ってないし横田さんの問いかけに対してただ返事をしただけだ。
だから何怒り出したんだろうと思って見ていると、隣にいた広兼さんが私の腕を掴んだ。
「じゃあ、確かに渡しましたので、これで」
足早に歩く広兼さんに連れられるまま、融資管理課を後にしてエレベーターに乗り込む。
そして一階のボタンを押したところで、苦笑いを向けられた。
「ダメじゃん。怒らせちゃ」
「え、私の言葉で怒ってたんですか? でも普通の会話だったし、むしろ横田さんの方がつっかかってきた感じがしたんですけど……」