恋よりもっと―うちの狂犬、もとい騎士さま―


「ああ、まぁ。新入社員研修で一緒になったし。
それより、姫川は確か高卒で入ってたよな。
なんか高い授業料払って四大出たのに意味ないよな。俺も高卒で入ればよかった」
「でも、四大出てた方が出世するには有利だから。
私は勉強もできないから高卒で就職しちゃったけど、男の人はちゃんと大学出てからの方が正解なのかなって思う」

そう、お父さんが由宇に言っていたのを思い出して、そのまま伝える。

由宇は元々どこの会社に入るにしてもレベルの高い四大を出た経験と学歴は無駄にならないって考えだったから、名取くんみたいに言った事はないけど。
由宇の考えにお父さんが共感して、前そんな話になった事があったから。

「そうかな。でもそう言ってもらえると嬉しいしやる気出るな」

そういえば、由宇はなんでこの会社を選んだんだろう。
私がこの会社に入ったのは、特に希望のなかった私にお父さんがじゃあと勧めてくれたからだ。
自分が勉強ができないのは分かってたから、単身違う場所に乗り込んでいくのも自信が持てなかったし、お父さんが勧めるままこの会社を受けた。

でも由宇はどこでもなんの業種でも器用にやってのけそうなのに。
もしかしたら由宇もお父さんに猛烈に勧められたりしたんだろうか。

ポーンと軽快な音が鳴ってエレベーターの扉が開く。

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