恋よりもっと―うちの狂犬、もとい騎士さま―
「久しぶりに会ったから懐かしいのか、やけにぐいぐいくるんです。
それで今も電話をしてきて……」
「昨日は星崎さんに邪魔されたから、今度はふたりで会いたいってわけね」
「はい……」
「名取くんだっけ? なんか変な火着いちゃってそうよね」
どういう意味か分からず黙っていると、広兼さんが説明してくれる。
「束縛の強い彼氏から俺が助け出してやる!みたいな感じで、意気込んでそう」
「でも……別に由宇のそういうところを迷惑だとか嫌だとか思ってないって、ちゃんと伝えましたよ」
「姫川がそう言えば言うほど、名取くんは燃えちゃうんじゃない?
今置かれている状況がツラいかどうかの判断もできない、何も知らず分からずの無知の姫川を自分の手でどうにか!って。
ほら、姫川ぼんやりしてるから。俺が眠りから覚まさせてやるって感じで」
「すごい使命感……」
「高校の時いいなーと思いながらも近づけなかった相手と再会できたってなればそうもなるんじゃない?
でも名取くんも強気よね。星崎さん相手に戦おうとするなんて。
カッコいいの? 名取くん」
んーと唸りながら名取くんの顔を思い浮かべてみる。
とは言っても、昨日少し会ったくらいだからよく覚えてないけれど。
「背は由宇よりも五センチくらい低くて、顔は普通な感じです。髪は由宇より短くて、短髪でした」
私の説明に、広兼さんはなにそれと明らかな不満顔をした。