恋よりもっと―うちの狂犬、もとい騎士さま―


「もっとあるでしょ? 芸能人で言うと誰とか。社内の誰に似てるとか」
「えー……ちょっと分からないです」
「じゃあ、星崎さんとならどっちが上?」
「それは……やっぱり由宇です」
「ふーん」
「……なんですか」

じろじろにやにやと見られて、そーっと目を逸らすと、にんまりと笑った広兼さんが私を見つめたまま言う。

「なんだかんだ言っても、姫川って星崎さんの事好きなんだなーって思っただけ。
比べる基準が全部星崎さんだから」
「え……でも昨日は本当に好きなのって聞いてたじゃないですか。
私、アレ聞かれてからちょっともやもやしてたのに」
「ああ、やきもち焼かないってくだりでね。
っていうか、私に言われただけでもやもやしてたの? あんた本当に恋愛オンチね」

自分の感情でしょ?と言う広兼さんに、確かにその通りなんですけど……と歯切れ悪く返事をする。

「自分の気持ちなのに、なんかよく分からなくて。
周りの子がしてる恋と私の由宇への想いって、少しズレてるから。
だからやきもち焼かないって事を広兼さんに言われて、やっぱりおかしいのかなってもやもやしてたんです」
「んー、分からないけど、一緒に居すぎるとかそういう事かもね。
恋愛通り越して家族みたいな想いになっちゃってるんじゃない?」




< 93 / 214 >

この作品をシェア

pagetop