恋よりもっと―うちの狂犬、もとい騎士さま―


由宇が私を特別扱いしてくれるのと一緒で、私だって由宇以外いないと思ってる。
そしてそれを由宇だって分かってると思うのに、なんで私に近づこうとする人をブロックしたり、名取くんと話したりするだけで不機嫌になったりするんだろう。

自分がそういう場面に出くわしても何も思わないだけに不思議でいると、広兼さんがふぅとため息をついて私を見る。

その顔は呆れていて、やれやれとでも言いたそうだ。

「姫川の気持ちが自分にあるのは分かりきってても、その気持ちはいつ変わるか分からないじゃない。
ちょっと目を離した隙に他の男に持って行かれちゃうかもしれないって思うから、他の男を寄せ付けないようにしてるんでしょ。
特に姫川なんか、世間知らずでふわふわしてるから心配なんじゃない?」
「由宇は……私の気持ちを信じてないとかそういう事なんですかね」
「信じてはいるけど、好きだからこそ心配なんでしょ。
だってしてる事は完全に恋人なのに、ちゃんとした関係ではないわけでしょ?
彼氏彼女でもないってなると、ふたりの関係ってすごく漠然としてるし、それを不安に思って心配になるのも当たり前だと思うけどなぁ」
「……そんなに関係をハッキリさせる事って重要でしょうか。
私は、そこまで言葉が必要だとは思えないんですけど……」

そんなに不安になってやきもち焼くくらいなら、関係をハッキリさせたいって言えばいいのに、なんで由宇は何も言わないんだろうと疑問に思う。
いつも言いたい事なんでも言ってくるんだから、それくらいの事言うのはなんでもないハズだ。

私が断らないっていうのも分かってるだろうし。
由宇がそんな関係ひとつで安心できるなら、中学の頃からそう言えばよかったのに。


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