恋よりもっと―うちの狂犬、もとい騎士さま―
私なんかよりも由宇の方が数倍モテるんだから、私だって由宇が誰かと話してるところとか見たら不安になってもいいハズだ。
とられちゃうんじゃないかって、私なんかより他の子を好きになっちゃうんじゃないかって、普通だったら思うみたいなのに……。
なんで私はいつも平気なんだろう。
うーんと唸りたい気持ちになりながら考えていると、広兼さんが悪い笑みを浮かべながらこちらを見てくる。
嫌な予感しかしないけれど、今日のメール便には融資管理課あてのは混ざってなかったし、他に押し付けられそうな仕事だってないし第一もう終業してる。
後は帰ればいいだけなのを、場所を借りて話してるだけなんだから。
だからなんだろうと思いながら見ていると、にやっと口角を釣り上げたまま言われる。
「言ってみれば? 好きだって」
「えっ……無理に決まってるじゃないですか! 絶対無理です! 今更だし」
「えー、でもそれ言っちゃえば全部が丸く収まるわけじゃない。
名取くんにだって、星崎さんと恋人になったからっていえばそれで終わるわけだし、星崎さん的にも一安心なんじゃないの?」
「そうだとしても……だって今まで10年も一緒にいて言ってないのに、それを今更とか……。
恥ずかしいにも限度がありますよ……。
しかも私の性格からして無理……」
焦りながらそんな事を言っていて、ハっとする。