To important friends
狂ったように俺が子供の物を買いあさっている間にも、どんどん大きくなって行く凛のお腹。

愛する妻の出産が近づくにつれ、産まれてくる子供への期待と、出産に伴うリスクに不安が募ってゆく。

産婦人科医ではないが、学生時代、研修などで学んだ自分の中に中途半端にある知識がより大きな不安を運んでくる。

そんな出産予定日が、あと数日に迫ったある日の朝、凛の陣痛がはじまった。

何か目的があったわけでなく、何と無く専門医になりたいと選んだ小児科。
子供特有の病気に、先天疾患。
どんな重篤な症状を持って我が子が産まれてきたとしても普通の子同様に愛したい。

我が子の命がどんなに儚い物であったとしても救ってやるんだなんて言えはしないけれど、きっとこの瞬間のためにこの道を選んだだと思える。

しかしそんな心配は必要なかったようだ。

彼女から産まれた小さな女の子。
そんなに心配しないでよと言うかのように響く産声に涙がこみあげた。
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